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AKB新センター・千葉恵里、「ちむどんどん」ライバル役・池間夏海。アイドルたちの「細いは正義」を愛でよう【宝泉薫】

宮沢りえ

 

 そして、そのような受難の史上最大の事例が四半世紀あまり前の宮沢りえだ。メディアはもとより、日本中が彼女の激痩せを「拒食症」だと疑い、その一挙手一投足に注目。極秘で治療中だとする報道も出た。こうした動きに対し、彼女は、

「骸骨みたい、って言われるのは、イヤです!」

 などと言って反論していたが、やがて活動を休止し、ロサンゼルスなどで休養をとった。

 とはいえ、当時の健康状態について、彼女はその後も含め、説明らしい説明をしていない。何らかの説明をしたほうがゆっくりと休養できるのではと、当時は感じたりもしたが、おそらくあれでよかったのだろう。女優・宮沢りえの歴史において、この激痩せ騒動は謎めいたものとして記憶され、その劇的かつ神秘的なイメージを高めることにつながっているからだ。

 一方、拒食症だったことをメディアで自発的に語ったのがともさかりえ。それなりに話題を呼んだし、彼女の葛藤も知られることとなったが、ちゃんと伝わりきったかどうかは疑問だ。もともと細身だったこともあいまって、軽症だったのではという受け取られ方もした。

 かと思えば、もともと細身だったのがさらに激痩せしたにもかかわらず、メディアがほとんど騒がなかったという、榎本加奈子のケースもある。これはメディア対策に強い業界最大手の事務所がバックアップしていたことが大きい。1990年代は宮沢りえを筆頭に、芸能人の激痩せが忖度なく報じられる時期だったが、榎本に関しては取り上げないというコンセンサスがメディア全体で成立していた。

 また、本人も手足を見せる服を積極的に着るなど、まさに「細いは正義」を主張していたふしがある。それゆえ、彼女のハイテンションな演技には不思議な明るさが漂っていた。その出演作に漫画やゲームが原作のものが多かったこともあり、二次元的な体型が大いに活かされていたのだ。

 こうしてみると、芸能人が健康状態について明かしすぎるのは損なのかもしれない。たとえ激痩せの理由が病気であっても、無理に公表することはないのだ。

 もちろん、公表することにメリットがあれば別。たとえば、AKBのスーパー研究生として騒がれながら、摂食障害を理由に正規メンバーとしての活動を辞退した光宗薫には、その公表に切実な意味があった。

 ただ、ほとんどの場合、謎めいていたほうがスターらしくいられるというのは、ひとつの真理だ。そもそも、芸能人、特にアイドルはビジュアルの魅力が何より大事。そこがせっかく謎めいていたのに、自分で説明して生々しい現実にする必要はない。しかも、世の中の人は「アイドルは細い」というイメージを勝手に持っていてくれるものなのだ。

 そこで思い出すのが、沖本富美代のことだ。双子の妹・美智代とともに、ミュージカル「ピーターパン」などで活躍。95年には「裸の大将放浪記」(フジテレビ系)第73話のゲストヒロインをふたりで務めたが、このとき、富美代は激痩せ状態になっていた。

 その後、ロケ地だった山形県の東根を旅した際、何か資料のようなものが残っていないかと市役所に立ち寄ったときのこと。対応してくれた女性職員に彼女の話を振ると、こんな言葉が聞けた。

「ものすごく細くてビックリしました。やっぱりすごいですね、女優さんって」

 そう、世の中は激痩せ=病気ととらえる人ばかりではない。アイドルや女優を特別な存在と見なし、だから細いのだと考える人も多いのだ。

 そんなイメージを裏切らないためにも、スレンダー芸能人にはその魅力をいかんなく発揮してほしい。

 なお、今回は「痩せの大食い女子は実在するか」という問題についても書くつもりだったが、スペースが尽きた。これもまた謎めいたテーマだ。いずれ改めて、取り上げることにしたい。

 

文:宝泉薫(作家・芸能評論家)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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